技術の家庭菜園

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Rollei 35 Xenarのシャッタースピード測定

予告してたネタ。でもなぜかやたらと機材語りが増えた。
測定結果に関しては「シャッタスピードの測定」から読んでいただきたい。

背景

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上記は唐突に「シャター速度を測りたい」と言い出し、なぜかと言えばそれが狂ってるものは「全く頂けない」からなどと抜かすクソ記事である。

別に我々はカメラのユーザーであって、壊れたカメラがあれば修理に出せば良いのだ。我々自身がそれを直す必要はないし、大概は直せない事が多い。
しかし、それでもシャッタスピードを測定したいと思ったのには、それなりの訳がある。

私はこのカメラを安心して使うためにシャッタスピードを測定したかったのだ。

Rollei 35 Schneider-Kreuznach S-Xenar 40mm f/3.5

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Rollei 35 Schneider-Kreuznach S-Xenar 40mm f/3.5

Rollei 35はドイツのRollei社によって開発された、ライカ判のコンパクトフィルムカメラである。
レンズは基本的にCarl ZeissのTessar 40mm f/3.5、もしくは同レンズをRolleiがOEM生産したものが用いられている。 *1
その唯一の例外が、本機Xenarモデルである。

Carl Zeissの名前は聞いたことがある人が多いかも知れないが、Schneider-Kreuznachの名前を知らない人はいるかも知れない。
SchneiderはZeissやRolleiと同様、ドイツの名門レンズメーカーであり、今でこそ日本メーカー等に押されて産業用レンズが主力商品となっているものの、高品質なレンズを多く供給している。
写真用レンズとしては、かのLeicaにXenon 50mm f/1.5としてレンズを供給していたことでも有名である。
S-Xenar 40mm f/3.5はSchneiderの製造したテッサータイプのレンズで、3群4枚の構成はZeissのTessar 40mm f/3.5と構成上は同一であるとされている。

オリジナルのRollei 35は1966年から1974年まで、およそ50万台が製造された。
後継のRollei 35T,Rollei 35TEが1974年から1981年までの間に同じく50万台程度製造されたので、Tessarが乗ったRollei 35はおよそ15年間で100万台が製造されていることになる。
その一方、Xenarが搭載されたモデルを製造していたのは、この15年のうち1972年7月から翌年4月までのわずか10ヶ月間のみ、製造されたのは3万台ほどである。*2

なぜこの期間だけXenarが採用されたかは、よくわからないが、ともあれ本カメラはちょっとした希少モデルであり、ちょっとだけ値段も高かったりする。
もう一つ言えることは、本カメラは72年か73年に製造されたものであり、半世紀近く前のカメラであるということである。

 

さて、私がこのカメラを買った時のことを少し語りたい。
昨年仕事に疲れ、何となくライカが欲しくなってレンズ見ていたら、クセノンの記事を見かけ、シュナイダーって実質ライカじゃね?といった意味不明な思考になった挙げ句、そういえばRollei 35にクセナーのあったよなーとなり、翌週にはオークションでポチってた。
まぁRollei 35シリーズは元から大好きなカメラの一つであったし、テッサー型のレンズも、また大好きなレンズであった。
いつもはゾナーでシルバーのRollei 35Sを使うが、黒くてシュナイダーでテッサーなRollei 35があれば買うしか無いのである。

実はこのカメラはジャンクとして購入したものであった。
ジャンク理由はスローシャッター不良バルブ不良である。
Rollei 35は古いカメラである。別にジャンクにしろジャンクじゃないにしろ、どこかしらが壊れ始めている。信頼できるところにオーバーホールは出しておきたいのだ。
ということで、買ってすぐ、Rolleiでいつもお世話になっていたロイカメラサービス様に連絡をとろうとして、驚いた。
イカメラサービスは2018年で修理受付を終了していたのである。
店主の竹川さんもご高齢であったので、仕方ないこととは思うが、大変残念で仕方ない。
今回買った35Xenarもそうであるし、他のRollei機も竹川さんにOHしていただいてから暫く経っており、再度出したい頃合いであった。

竹川さんに初めて修理していただいた35Sを触ったときのことは今でもしっかりと思い出せる。
小さな打痕さえ綺麗に修正され、元からだと思っていた裏蓋の引っかかりやダイヤルの感触が全てがスムーズ、そして全てファインダーからレンズまで全てがクリアでになって、50年前のカメラが新品かのような状態で私の手元に届いたときのあの感動と言ったら!
付属された納品書に書かれた誠実な観察と作業によるレポートは、それが信頼できるものであることを裏付けるに十分なものであった。
私は他人の技術をあまり信頼しない。そのため本当に信頼できる職人さんが引退されるのは残念で仕方ない。

少し話がそれた。本機はオーバーホール前提でスローシャッター不良のジャンクを購入したものだが、それが叶わなくなってしまった。
私は他人の技術を信頼していないので、信頼できない人に金を取られるくらいなら自分でやる。
実際Rolleiのような古いカメラを正しく扱える職人さんはすでにもう限られているのだから、ある程度は自分で出来なければならない。
露出計の調整くらいなら何とか自分で出来るし、あとはシャッタースピードが分かれば、一応カメラとしては使える。
よし、まずは正しくシャッタスピードを測ろう―――。

と、なったのが本当の動機である。
とは言えども、全く今後はどうしたものかなぁ。誰か信頼できる職人さんを紹介してほしい。

シャッタースピードの測定

さて、以上オタク特有の早口でいろいろ喋ってしまった。本題に戻りたい。
改めて、本機はオークションでジャンクとして購入したものである。
前のオーナー曰く、スローシャッターに不良があり、そしてバルブシャッターが切れないとのことであったが、実際に使うと問題なく切れた。
低速も音だけ聞くと、特に問題は感じない。
しかし、50年前のカメラということもあり、前オーナーの指摘通りシャッター周りにトラブルを抱えている可能性は高い。
シャッタースピードの測定により、本機が実用可能であるかどうかを検証したい。

早速ではあるが、各シャッタスピードにおける露光時間の測定結果を示そう。(N=3)*3
測定方法に関しては先述の記事を見ていただきたい。

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Rollei 35 Xenarのシャッタスピード

結論から言えば、使用上問題ない。
最大で誤差率17%程度であり、一見すると、大きな誤差であると思うだろうが、ことカメラにおいてはさほど大きくはないと考えて良いだろう。
実際最も誤差が大きかった設定1/15secを取り上げてみよう。
測定した露光時間は0.078secつまりおよそ1/13secであったが、これは1/15secから見て露出としておよそ1/3段分のオーバーに相当する。
たとえポジで撮るにしても1/3段を追い詰める必要がある場面は少ないであろうし、本カメラのような目測式で外部露出計のカメラで、しかも普段ネガフィルムを入れているのであれば、そこを気にする場面など存在しない。

先の記事でも引っ張ったシャッター速度測定の先駆者、よねLab様*4は、4台のカメラでそれぞれシャッター速度を測定し、それぞれの機種に関して差はあるものの、どれも誤差率が10%~20%程度含んでいることを示している。
本機においては平均すると誤差率7%程度であり、比較的優秀な値、十分に実用に足ることを示している。

 

本測定により、シャッターが問題ない事が判明したが、それでもやはり不安が残る。
というか、オークションの注意書きは何だったのであろうか。
不安は募るばかりであるし、やはり一度どこかにオーバーホール出したいものだ。

 

(2022年1月1日追記)

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*1:B35/C35/35Sのような様々なバリエーションがあり、それぞれに付いているレンズが異なる。しかしテッサーを採用してるのは35無印とその後継35Tや35TEだけである。

*2:出典 : https://en.wikipedia.org/wiki/Rollei_35

*3:サンプル数がお世辞にも多いとは言えないが、許してほしい。

*4:http://home.n05.itscom.net/yone-lab/electronics/shutter/shutter.html